THE OXFORD MURDERS
アレックス・デ・ラ・イグレシア
蝶の羽ばたきが嵐を起こす
あらすじ
オックスフォード大学に、アメリカから留学生としてやってきたマーティン(イライジャ・ウッド)が、連続殺人事件に巻き込まれることによって、憧れの数学者セルダム(ジョン・ハート)とお近づきになれて嬉しいな!!・・・という、ギジェルモ・マルティネス原作の数学ラブストーリー・・・、ミステリー。
なんせ、監督がアレックス・デ・ラ・イグレシアなので、一見しおらしいミステリーに見えても、隅々に、油断ならない仕込みがチラつくのはまぁ当然。
感想
アタイ的には、数学は、遠くに・・・つーか、はるか遠くにありて思うもの。
なので、序盤から、「哲学をも殺す数学」に太刀打ち可能なわけもなく、さんざん惑わされた脳内は、散らかるだけの一方通行。
まぁ、今にして振り返れば、アタイのショボイ味噌をフル稼動して、マーティンやセルダムのセリフを理解しようと頑張れば頑張るほど、監督の思うツボにはまる仕組みだった模様です。
それってめっちゃ、快感ですよね。映画には、思うツボにハマれる幸せ、みごとに騙される楽しさ、ってモンがある。
■続き
イグレシア監督って、つい奇抜なイメージが先行しちゃうんですけど、なんだかんだいって、やっぱり根っこから先っちょまで、才人なんだな~~と、アタイはこの映画で尊敬心を新たにしました。
まず、映画が始まってしばらくして、キーパーソンたちがニアミスする、長回しのシーンがあるんだけど、それがめっちゃイイんですよ。
思わず、そのシーンばっかし、5回ぐらい見た。
あと、本屋さんが凄い。
もし近所にあんな本屋さんがあったら、それだけでアタイ、大気圏外まで舞い上がること必至。つーかもうあそこに住みたい。ついでに、あそこに墓を建てたい。アタイが死んだら、あの本屋さんに埋めて欲しいし、無理なら遺灰を撒いて欲しい!!<オイ!
それから、キャストが超ツボる。
ジョン・ハートとイライジャ・ウッドの組み合わせの、いけない雰囲気最高です。
脇を固める人々は、ドミニク・ピノン、ジム・カーター、バーン・ゴーマン、と、眼輪筋と口輪筋が、思わずほころぶ曲者ぞろい。
そして、正直、マーティンとローナの濡れ場って、なんかウザいぞ!!思ってたけど、そんな自分が間違っていた!と反省するあのシーン!
レオノール・ワトリングが惜しみなくかなえてくれる、オレたちの夢、裸エプロン!!
しかも、スパゲティの女体盛りまでついてくる!
はあはあ!!
しかしまぁ、数学に獲りつかれ、目を血走らせながら深遠を見ようと求め、人生を捧げる学者たち。それぞれの方向ながら、壮絶な闇と病みに侵されている。
セルダムが、「数学教の信者」と呼ぶその状態に、ひとたび陥ってしまったら、もはや後戻りはできないのだろう。
まさしくマーティンも例外じゃない。
事件が、一件落着の段階で、イギリスでの研究生活に見切りをつけ、恋人と遠くに行こうとするマーティン。
心機一転のはずなのに、ふとした行動であっさり事件を蒸し返し、頭は真相を探りやめない。
つーか、遠くに行こうとか抜かしつつ、カバンの中に、事件の写真の束が入ってるとは何事だ!
そら、ローナもアタイも、「だみだこりゃ。オミャーは真相と心中しろ。」と愛想が尽きるってモンだよね。
そして、数学者の自尊心を見事にコケにするあのラスト。
なんだそれ!!後味悪いぞ!す、ば、ら、し、い!
それにしても、知的障害者を重罪人とみなして、医学実験のモルモットに使う、という考え方が、この世に存在するということが、心底恐ろしくてなりませぬ。
昨今、根っこが似たりよったりな、そのテのニュースを見聞きして、21世紀になってなお、命を選別する、という驕った思想の根強さに、けっこうガックリくるものがある。
さあ!イグレシア監督の映画を見よう!
▼気狂いピエロの決闘
登場人物バッチィですしね・・・・どいつもこいつもどうかしてるんですけど、個人的には殿堂入りの映画です。
が、全ての人にオススメするわけではございません。
これをまだ見てない、心が広くて慈悲深い、ホトケのようなあなただけ、あなただけ・・・。<耳元で
▼みんなのしあわせ
これはまぁ、大きな声でオススメしても、そこまで怒られないんじゃないだろうか・・・。
まだ見てない人は、みんな見たらいいんじゃないだろうか・・・。
いや決して、無理にとは申しませんが・・・・・。
感想はこちらに。↓
「オックスフォード連続殺人」データ
THE OXFORD MURDERS(2008)スペイン/イギリス/フランス
監督
- アレックス・デ・ラ・イグレシア
キャスト
- イライジャ・ウッド(マーティン)
- ジョン・ハート(アーサー・セルダム)
- レオノール・ワトリング(ローナ)
- ジム・カーター(ピーターセン警部)
- ジュリー・コックス(ベス)
- アレックス・コックス(カルマン)
- バーン・ゴーマン(ユーリ・ポドロフ)
- ドミニク・ピノン(フランク)
- アンナ・マッセイ(イーグルトン夫人)
- ダニー・サパーニ(スコット)
- アラン・デヴィッド(ヒギンズ)
- トム・フレデリック(ウィトゲンシュタイン)