THE KINGDOM / ラース・フォン・トリアー
再放送希望!天才、ラース・フォン・トリアーの未完成テレビドラマ
かつて洗濯池であった土地にそそり立つ、巨大病院キングダム。
プチ国家ともいえる巨大建造物ゆえに、そこにひしめく人間たちもハンパなく多種多様。
各種個性の揃いブミ。
過去の哀愁と足元のもろさをを匂わせる立地条件もあいまって、日常的に、ありとあらゆる怪奇現象が起こっている。
だが、そもそも「怪奇」とはなんだろう?何がヘンで、何が普通と言えるのだろう?
……とまぁ、誰もが独自に抱えている「病み」を、若きラース・フォン・トリアーがブラックかつシュールにあられもなく剥きだしたテレビ・ドラマで、確かに私は何度も見るほど大好きなのだが、この人を食ったドラマの持つおかしさから発生した笑いは、一種の自虐とも言えちゃいそう。
たぶん、これでもラース監督は大衆融合路線のつもりで、頑張っておさえにおさえたんじゃないのかなぁ~とは思ったりするものの、そんなムリは所詮導入部分ぐらいでしか持ちこたえず、やっぱし見る人をふりほどく方向に向かって、どんどん転げていくのであります。
■続き
で、あるにもかかわらず、これが視聴率50%を取ってたですとな?
な、な、なんと寛容な国なんだデンマーク!!
その事実だけでアタイ的には、日本がこのまま崩壊したときの移住国候補に、デンマークがランクインしました。
まぁ、群像劇のくせに、キャラがいちいち濃いもんだから、一話見るたびにずっしり満腹になります。でも、脂でギトギト、塩分濃い目、1度ハマったら即メタボ!みたいな香港映画みたいな濃さではなくて、各種ハーブを山盛りに盛って、トリプルチーズで焼いてみたピザ、巧みに仕込まれたアレルゲンの強いハーブが体の中で活性し、徐々に蝕まれていきました、みたいな面白さなので、満腹になればなるほど、やつれてしまいそうなフシがある。
なにはともあれ、キャラ多いので、メインだけでも整理しておこう。
スウェーデン人の医師、ヘルマーは、キングダム、というか、デンマークに馴染むことができないオレサマ医師。毎日、盗難防止のため、愛車のホイールを外して出勤する。自国で何かマズいことをやらかして、とばされてきたものの、デンマークに差別感を抱いているので毎日を苦々しく過ごしている。特に、ヘルマーを立ててくれない、若手医師のクロウスホイが気に入らない。現在、医療ミスの疑いで、患者の家族に訴えられそうになっている。 | |
入院マニアのドルッセ夫人。仮病で入院にこぎつけては、入院患者たちを集めて、なんちゃって降霊会などをやっている。25回目の入院で、ヘルマーに目をつけられ強制退院させられるが、エレベーターで生まれてはじめて本物の霊とコンタクトできた(と確信した)ため、帰宅前に26回目の仮病によって再入院する。浮かばれない霊を成仏させられるのは自分だけ、と信じて一所懸命だ。昔、1週間家出をされた心の傷を利用して、息子をこきつかっている。 | |
病理学者、ボンド医師。 ikuko最愛のキャラクター(笑)。 ガンの研究をライフワークとしていて、10年に1度出会えるかどうかの、理想のガンにおかされた肝臓をゲットするため、研究者として、まっしぐらに行動する。 このシトが年を食ったら、「ホルテンさん」になるのだヨ。 | |
若手医師、クロウスホイ。 病院に住んで、内部に詳しい利点を活かし、便利屋のようなことをやっている。独自の価値観を持っており、友愛会には入らず、マイペースにやっている。 医師にしては世間ずれしていて融通も効くのだが、ヘルマーに嫌われているため、のちのちえらいことになる。 | |
医学生モッゲ。熟女フェチ。 メスゴー医師長のボンクラ息子で、親からだけは期待されている。 お気に入り熟女、カミーラの気を引くため、自分に似ている解剖用の死体の「首」をチョロマカしてプレゼントしたが、当然そんな冗談は通じず、さらにロッカーに放置していた首が消えたことから、いろんな意味でピンチに陥る。 |
第一話 さまよえる少女
もと洗濯池。
とりあえず、そんな立地にバカデカイもんなぞ建てんじゃねぇぇぇ~~~と突っ込んでヨシ、な、巨大病院。
キングダムと呼ばれている。
その場に集う生きた人々をはじめ、死人や亡霊にいたるすべてのものどものワビサビを、あまねく抱え込んでいる場所だ。
それは、現在に留まらず、過去にさかのぼって影響しているという根の深さ。
今日も今日とてキングダムでは、いろんな出来事が、あちらこちらで起こっている。
いたかと思えば消えている、救急車の怪。
自分を相手にしてくれない熟女の気を、アノ手この手で引きたい若造。
脳外科手術の失敗で、廃人と化した少女。
逆ギレするスウェーデン人。
医師たちの秘密結社、友愛会。
能天気運動に、無駄に意欲を燃やす医師長。
病院に住み、患者のプチ墓をまつる若手医師。
エレベーターの中で、霊の声を聞く、仮病で入院を繰り返してきた老女。
・・・・・・・・・・・。
こんな話、ガイ・リッチーとかがやったとしたら、大きく名札をつけないと、誰が誰だかわかんなくなるに決まってる。
でも、これにはブラピとベニチオ・デルトロが同時に出たりしないぶん、キャラクターの違いは自然に頭に入ってくるよ。ちなみに、レード・セルベッジアとデニス・ファリーナも同時に出ないので安心。
まぁ、なんつっても、まずはヘルマーの可愛さに尽きるんとちゃう?
すこぶる嫌なやつなんだけど、段々かわいく思えてくるのだ~~~極端にシニカルに描かれてるけど、行動や反応が単刀直入に人間くさい。
エリート意識丸出しの、3言えば10からんでくるような面倒なオッサンだけど、コツをつかめば最も扱いやすいタイプな感じで、愛人のリーモア医師との絡みの、いかにもありそうなキモ面白さがたまりません。
腕前は誇示したいが、失敗は認めたくないので、脳手術の失敗をとがめられて逆ギレしたりするハタ迷惑さだけど、今の時代じゃ、結構絶滅しかけてる種だとも思う。
さてお話は、ドルッセ夫人が息子ブルザーと共に、ついに、エレベーターの上に、少女の亡霊の姿を見た。
そして、沼地だった地面が崩れはじめ、次回へ・・・・。
第二話 御国を来たらせたまえ
とはいえ、1話で地盤が崩れ切るわけもないので、地面の件は、予兆程度のことであった模様。
今日もキングダムではめくるめく出来事のほうが洪水のようだ。
医師長が目を輝かせて推奨する、「朝の空気運動」のステッカーができていたり、麻酔アレルギー患者が、催眠術で脳手術(笑)。とか。
患者は術中、幽霊少女につきそわれていて、どうやら幽霊は「悪い幽霊じゃない」とわかるのです。
一方でボンド先生は、まだ生きてるガン患者の家族に、死んだら解剖させてくれ、とお願いに行って断られたり、もちろんドルッセ夫人も死ぬ寸前の友の協力を得て、幽霊の少女マリーの謎にぐんぐん迫っていく名探偵ぶり。
カミラの睡眠臨床実験室にまんまともぐりこんだモッゲも、悪夢にうなされ、あわてて首を回収するため、ロッカーに急いだ。ところが隠してあった首が忽然と消えているではないか。モッゲ、ピーーーンチ!!
ともあれ、ドルッセ夫人の勇敢な捜査で、病院創設者オーエ・クルーガー博士の存在が浮かび上がった。
一方、とうとうロマンス関係に入ったユディットとクロウスホイ。だがユディットは前の恋人の子供を身ごもっていた。前の恋人の名は「オーエ」。ん?オーエ?続きはどうなる?
・・・ってことで、やっぱいいな~~キングダム。この続きは、さらにどんどん、ウッソー!!みたいな方向に爆走、ありえないほど面白くなっていきます。
なんたって、大衆を楽しませるためのサービス精神が見てとれるのがスゴイですヨ!!
フォン・トリアーさんのような天才がエンタメを意識した作品は、多くの人を、このようにいとも簡単に楽しませてくれるんだなぁ。
ただ、このタイプのデリケートな天才には、「年食うごと、だんだん大衆を置き去りにして己の世界に没頭していくパターン」ってあると思うので、キングダムに見られるサービス精神は、監督の「若さ」でもあったような気がします。
トリアーさんのバヤイ、もう、こんな作品は二度と撮らないだろうと思うだけに、プレミアもんすよね!
だから、特別な意味をこめて、広くオススメしちゃいたいのよなぁ。出演者がお亡くなりになったりして、未完のままではあるものの、途中まででも面白いので、運良くテレビ放送があれば、迷わず保存するが吉。
アマゾンのアフィリも貼ってはおいたが、廃盤みたいなので、もしなければオークションなどでゲットするもよし。
でも高すぎなんよね!!手が出ないぞ!!
アタイも、昔録画していたテープが行方不明で、なかなか続きの感想が書けません!
どうにかして、リマスター版を安価で出してほしい!
2010年10月18日
▼キング版は、ぶっちゃけ、別に面白くないです。
「キングダムⅠ第一章」データ
THE KINGDOM (1994年・デンマーク) Riget(原題)
監督//
- ラース・フォン・トリアー
出演//
- エルンスト・フーゴ・イエアゴー(スティグ・ヘルマー主任医師)
- キアステン・ロルフェス(シグリッド・ドルッセ夫人)
- セーン・ピンマール(クロウスホイ医師)
- ホルガー・ユール・ハンセン(メスゴー医師長)
- ブリジッデ・ロービャー(ユディット)
- ボード・オーヴェ(ボンド病理学者)
- ピーター・ミュウギン (モッゲ=メスゴー医師長の息子)
- アンネヴィー・スケルゼ・エッベ(マリー=幽霊)
- ギタ・ニアビュー(リーモア医師=ヘルマーの愛人)
- ジェンズ・オッキン(ブルザー看護士=ドルッセ夫人の息子)
- ヴィータ・イエンセン(皿洗い)
- モーテン・ロッネ・レッファース(皿洗い)
- ウド・キアー(オーエ・クルーガー博士)
- ラウラ・クリステンセン(モナ)
- ソルビョルグ・ホイフェルド(睡眠実験技師、カーミラ)