AN AMERICAN CRIME / トミー・オヘイヴァー
エレン・ペイジのかぼそさがつらい
これは、見るまでがとてつもなくしんどかったっす。見ようか、いやムリ、見ようか、いやムリ、の繰り返しで、引き延ばすこと、気の進まない仕事のごとし。
なんせ1965年、インディアナ州で起こった、少女虐待事件の実話がもとなんですことよ、おくさん。
大体どういうことが行われたのか、あらかじめ予備知識があるだけに、見終わったあと、しばらくダウナーになるんだろうな~~~って、わかりきってるじゃないっすか。ねえ!
そういうモノは、よっぽど明るい気分の時に見ないとヤバイが、ラリパッパに明るい時には、暗い映画など見てる場合じゃないもんねぇ。
結局、気分を選ばず、ボチボチと見ました・・・・。
■続き
いざ、見てみれば、直接的な残酷描写があるわけでもなく、淡々と見終わりました。
でも、こういう映画のダウナーは、あとからドーンとやってくるので油断がならぬ。ふううっ、きてます、きてます。
んとね、やっぱしなにが怖いって、ガートルードが、ジェイソン(注1)やバンディ(注2)じゃないこと。
つまり、架空実在を問わず、殺さずにはいられないぜ!みたいな構造をした、「天然殺人鬼」なんちゅう特別なものではないってこと。
確かに精神はもろく、情けなく、あぶなげな人ではあるのだけど、条件さえ重ならなければ、ごく普通の人として生きていたかもしれない、そういうレベルの人なのだ。
いや、ぶんぶん、ガートルード自身は「一歩間違えばマズイ」人が「一歩間違った」殺人者なので、やはり「普通」と呼ぶには抵抗があるぞ!
だけど、犯人はガートルードひとりではなかった。きっと、ここがミソなんだ。
生まれながらの殺人鬼でもない普通の子供たちが、本人自身「なぜかよくわからない」けど心を巻き込まれて、ひとりの少女をいたぶり、死に追いやった。
客観的には、それが「集団狂気」だと思えるのに、当事者たちから、その判断力は失われているんだよ~~!
こっこっこ、これを、怖いと言わずして!!!
恐怖のホシは、たぶん、誰もが「当事者」になりうるんちゃうん?という懸念。
もちろん、当事者になんかならないもん!と、誰しもそう思ってる。ハズ。
だって、人間には「良心」という永遠の友がいるんだもんね。ただ、友はたま~に、留守をする。
ぶっちゃけ、「脳とは、操作されちゃうモノ」らしいから、それを自覚しておく必要があるんだろうなぁ。
たとえば、テレビで美女が、おいしそうに有名店のスイーツを食べている映像を、ピピピとキャッチすれば、スイーツな欲求が発生し、煩悩を満たすため、店に押しかけて行列を作らせるのが、脳の仕業。
宇宙人やミジンコがどうだかは知らないけど、人はおおむね、「カイカン(ドーパミン)」があるから生きていける。
もちろん、快感発生ポイントが、スイーツだったら、刑事的には無問題。
あっ、ただ、発生条件はエスカレートしがちらしいから、糖尿病には気をつけないと!
つーか、発生ポインツが善行だったら聖人、フォアグラだったらメタボ、ガンダムだったらガンオタ、麻薬だったら田代まさし、えっちだったらタイガー・ウッズ、あくどいオカネだったらお代官さま!!!
ようは、いかに清く正しく法にふれずに、ドーパミンを発生させているかで魂のランクが決まるのね、みたいな感じなんじゃないのかなぁ~~。
で、ガートルードのポインツはたぶん・・・ムニャムニャ・・・ってところで、そういう実例を見せ付けられて、ががーーーん!!ってコトになり、常人は打ちのめされてしまうのでしょう。
殺人事件として、こういう如実な現象が起これば、みんな眉をひそめるけれど、私たちの生きる世の中は、そういう危うさに満ちている。やっぱり、浮世バナレなゾンビより、精巧さを追求する血糊フェチのつくるスプラッタより、「人が怖い」映画の方が、ぐっと後味が悪いよね~~。
ってコトで、被害者のシルヴィアを演じる、エレン・ペイジのかぼそさと、キャサリン・キーナーのしぶい演技と、普通の人が、陥る狂気に震えた一品。
ちなみに、オススメはしません。しないけど、同じ事件を扱った話として見るならば、「隣の家の少女」よりは、「アメリカン・クライム」を見たほうがいいような気がします。
いや、隣の家の少女は、見てないけど。
だって、あれにはスティーブン・キング(注3)が「怖い」とコメントを寄せてるそうじゃないですか。大体、キングのコメントがついてる映画で、怖いか、面白いのに当たったためしがないっぺさ(爆)。<コラー!
2010年9月19日
※注1) 13日の金曜日の主役、ジェイソン・ホービーズ!
※注2) アメリカの女たらし連続殺人犯、テッド・バンディ!
※注3) キング、嫌いじゃないっすよ・・・(笑)。
「アメリカン・クライム」データ
AN AMERICAN CRIME (2008年/アメリカ)
監督//
- トミー・オヘイヴァー
出演//
- キャサリン・キーナー (ガートルード・バニシェウスキー)
- エレン・ペイジ (シルヴィア・ライケンズ)
- ヘイリー・マクファーランド (ジェニー・ライケンズ)
- ジェイムズ・フランコ (アンディ)
- ブラッドリー・ホイットフォード (リロイ・ニュウ)